2004年04月02日

秋の色-7(@w荒

15.
ヲレは少女を連れて、川見の寝室を出た。
少女の部屋に向かう。
ヲレと少女はベッドに腰を下ろした。
「お父さんを許せないかい?(@w荒
そう聞くと、少女は強く頷いた。
「苦しいんだろ?(@w荒
少女はまた頷いた。
「君が苦しみから抜け出す方法は、
 たった一つしかない(@w荒
ヲレは少女を見つめた。
少女は不思議そうな顔でヲレを見つめた。
「それって・・・」
「簡単なことさ。君も大人になるんだよ。
 大人として、人生の影を帯びるのさ。
ここに来るとき、高速から都市の輝きを見たろ?
命というのはあれと同じさ。
闇とその中に蠢く(うごめく)光が
その正体なんだよ。
 光も影もなければ、人間の生き方ではないのさ」
 それを聞くと、少女はぽつりと言った。
「どうすれば、大人になれるの?」
「簡単さ。黙ることだ」
「黙るって?」
 少女の瞳が輝きを増してきた。
「こうするのさ」
 ヲレは少女の唇を自分の唇でふさいだ(@w荒

 時間が、ゆっくりと流れていった(@w荒


16.
ベッドのシーツに血がついている。
少女は服を着ながらベッドから立ち上がった。
ヲレは少女の肩を抱いて部屋を出た。
「いたたたた・・・・」
少女はガニ股になってびっこを引きながら歩いている。
「痛かった?」
少女は顔を顰めて頷いた。
「私、大人になったのかな?」
「ああ、多分(@w荒
大嘘だが、まあいいだろう(@w荒
ヲレたちが再び川見の部屋の前を通ったとき、
少女は開け放したドアの向こうのベッドに横たわる
川見を見て、部屋の中に入り、そっと布団を掛けた。
その仕草の優しさに、ヲレは少女の心の中に
再び詩が少しずつ流れ始めたのを感じた(@w荒
ヲレたちは車に乗り、川見の、
そして少女の家を去った(@w荒


17.

あれから1年が過ぎた。
友人と少女の母は、二人で元気に暮らしている。
ヲレは渋谷駅を出て歩きながら、
街頭の巨大ヴィジョンを見つめた。
少女が、画面の中で歌い、踊っている。
となりの画面では、少女のチョコレートのCMが流れている。
少女は父親のもとで生きる決意をした。
歌は、相変わらずそう巧いというわけではないが。
なに、そのうち巧くなるさ(@w荒

歌手は、歌が巧ければ売れるというわけでもない。
人生も、生き方が巧ければ幸福というわけでもない。

ヲレは少女の新曲を口ずさみながら、
センター街へ向かう広大な横断歩道を渡っていった(@w荒


             -完-


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posted by 東京kitty at 09:42| 東京 🌁| Comment(1) | 秋の色(@w荒 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なるほど
Posted by at 2004年04月03日 19:45
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