小さくまとまった字で自分の名前を記帳した。
彼は、少し前まで神の如く崇拝していた父が
記帳をしているのを横目でちらりと見た。
もう、どんな他人も権威としては仰がない。
自分は、個人なのだ。
彼は、一旦坂下門を振り返った後、
家族と一緒に皇居を去った。
この日から2ヶ月後、
ジュネーブの高エネルギー物理学研究所(CERN)の
コンサルタントのバーナーズ=リーは
研究者間の知識の共用を促進するために、
ハイパーテキストによる情報の相互参照という概念を案出した。
これはWWWの基本概念である。
更にこの年、米ソ冷戦の際、
核戦争によってネットワークが破壊された場合の対策として
考案された米軍のARPAnetは解体され、
民間利用が促進されることになる。
インターネットが爆発的に発達するまで、あとわずかであった。
ベルリンの壁は11月に崩壊し、
そして東京証券所株価指数は、12月に最高値を記録する。
だが、そのいずれも
いまだにひろゆきの知るところではなかった。
-完-
次も楽しみにしています。