「ただいま」
ドアを開けて出てきたのは、姉だった。
「ひろゆきっ!!!」
姉はひろゆきを睨みつけた。
「どこ行ってたのよ!!!」
「どうしたの?」
「どうしたじゃないでしょ?
天皇陛下が崩御されたというのに!!」
「今日ご飯食べにいくの、中止なんでしょ?
だったら別にいいじゃん」
「中止かどうかどうしてあんたがわかるのよ?
もしかしたら中止でなかったかもしれないでしょ?
なんで自分で判断して勝手にあちこち出歩くわけ?」
姉は既にヴチ切れていた。
ひろゆきもキレた。
「聞きますけど、今日は行かないの?行くの?」
「行かないわよ!!お父さんも帰って来ているけど、
あんたのこと怒ってるよ!」
これは嘘だ。
姉は父の権威を傘に来て話しているだけだ。
ひろゆきはこの頃になってくると姉の口調で
発言の真贋がやや判断できるようになっていた。
ひろゆきは姉が苦手だった。
なんといっても背が高く、見下ろされているというのと、
それから言っていることが理不尽で、非論理的なのだ。
父も母も穏当な人間で、理非を弁えているのに、
姉はどちらにも似ていない。
姉が叫びだして高い声で話し出すと、
ひろゆきは自分の脳が壊れていくような気がいつもしていた。
相手にしても、仕方がない。