2004年04月01日

昭和最後の日-7(@w荒

組織の一員として働くのはいやだなあ?
ひろゆきは、その父の姿をみてそういった思いを強くした。
生徒会の仕事もそれ以来はサボリ勝ちだ。
だが、今日の午前はきっちりと参加した。
それは、テニス部で練習をしている
クラスメートの少女を見るためである。
だが、あいにく隣の中学に練習試合に出かけていた。
今ごろには中学に帰ってきて、夕方まで練習しているはずだ。
彼は自転車を中学の近くに停めた。

ひろゆきはクラスの中では浮いていた。
友達はいることはいるが、
ひろゆき自体あまり友達づきあいが好きな方でもないし、
エイジや金田のように
ゲームソフトを持っている者のところに入り浸って
ゲームをするというのがその主な交際の態様だった。
ひろゆきは、集団行動が苦手だった。
皆と同じ行動をするということが苦痛でたまらなかった。
自分の時間を強制的に奪われるのがイヤなのだ。
大体、官舎という
もともと同じ職場の同じような給料を
貰っている人々の家族と暮らし、
そこでは元々すぐに噂が広まって
プライバシーが脅かされているというだけではなく、
部屋自体も姉と共有で、自分の部屋さえももっていないので、
自分の空間や時間というものが極端に少ない。
ひろゆきは、そんな自分の日常が嫌だった。
自分だけの時間と空間。
自分だけの暮らし。
ひろゆきはそれに憧れていた。

小学校のときは、
ひろゆきは常に授業中は誰かと話したり、
また突然教室を歩き出したり、外に出たりした。
それは、学校という制度による
強制的な時間の窃盗行為に対する
ひろゆきの一種の反抗といえた。

だが、
中学に入ってそれは通らなくなった。
一学期の最初の授業のときだった。
ひろゆきは真新しい学生服を着て
周りの小学校時代からの知り合いに話し掛けたとき、
教師がつかつかとやってきて、
ひろゆきの耳を掴んだ。
「いて、いててててててててて」
その姿に、クラスの皆は爆笑した。
このとき彼のクラスでの地位は定まった。
ひろゆきは、本当は極めて論理的で理屈の通った人間だが、
クラスではおどけたひょうきん者の仮面を被ることにした。
笑われているように見えるが、
本当は笑わせてやっているんだ。
ひろゆきは、
常にそう思いながらおどけた振る舞いをしていた。
だが、ひろゆきの冗談はそれほど面白いものではない。

彼の本質である理が優っているため、
予想ほど人は笑ってくれないのだ。
ひろゆきが笑わせようとして何か言ったとき、
大抵はクラスに沈黙が支配した。
だが、
ひろゆきが一旦何か失敗をしたり、
思いもかけないところで
人は大笑いするのだ。
これは彼にとっては痛し痒しなところだった。
それがこれまでの彼と他人との関わり方だった。



posted by 東京kitty at 15:57| 東京 ☀| Comment(0) | 昭和最後の日(@w荒 - 2ちゃんねる最初の日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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