2004年04月01日

昭和最後の日-4(@w荒

テレビのニュースでは、昭和天皇の崩御を聞いて、
皇居前の広場に集まる老若男女の姿が映し出されていた。
女子高校生が泣きながらインタビューに答える。
「陛下死んじゃった・・・」
ひろゆきはそれを見て首を傾げた。
「なんで赤の他人のじいさんが死んだくらいで泣くんだろう?」
金田は真っ青になった。
「おまえっ!日本人だろうが!!天皇陛下が死んで
どうしてそんなことを言ってられるんだ?」


ひろゆきは金田に向き直った。
「金田さ、お前は韓国人だろ?それに、
もともと日本に強制的に連れて来られた
人の子孫じゃないか。
あの人には恨みがあって当然じゃないのか?」
金田は沈黙し、やがて重く口を開いた。
「アボジやオムニはそう言っている。でも、俺の意見は違う」
「どういう風に?」
「俺は日本で生まれて、日本語を話している。
 小学校も中学校も日本の学校に行っている。
 お前たちとどう違うんだよ?
 朝鮮語、俺読めないよ。俺は国籍はとにかく、
 心の中は日本人だ」
ひろゆきは金田の言いたいことがわかった。
「そうか。昭和天皇の死に、
 他の日本人たちと同じ気分を味わって
日本人になりたいってことか」
ひろゆきのあからさまな言葉に、金田は怒った。
「ひろゆき!お前おかしい。天皇が死んだんだぞ?
 店だってどこも閉まっている!
 みんな悲しんでいるんだ」
「だからっておれまで悲しむ必要ないじゃん」
ひろゆきは言い放った。
「大体、天皇の誕生日を休みにすること自体、
変だよ。そんなことをしていたら、
そのうち一年中休みになってしまうよ」
ひろゆきは冷静に言った。

金田は、覗き込むようにひろゆきを見た。
「ひろゆき・・・お前ひょっとして国とか、
天皇とか、そういったものがキライなのか?」
その質問は、
ひろゆきにとっては今まで考えたことがない問題だった。
ひろゆきは衝撃に打たれたように考え込んだ。
「国とか天皇がキライ?うーむ」
そして、ひとしきり考えた後、
「いや、国とか天皇っていうのは、
好きとか嫌いとかの対象じゃないよ」
「?」
疑問符を心に浮かべるのは、今度は金田の番だった。
「この国に生きているから、
否応なく引き受けるべきものであって、
仕組みというものだよ。
それに好きとか嫌いとか言うべきではないよ。
ただ、おれのいきかたに邪魔をしなければそれでいい。
おれはおれで好きでやりたい」
ひろゆきは、後もこの言葉に支配され、
動かされていくことになる。
昭和天皇が死んだこの日、この時間、
ひろゆきの根本的哲学が確立した。
posted by 東京kitty at 15:48| 東京 ☀| Comment(0) | 昭和最後の日(@w荒 - 2ちゃんねる最初の日 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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