2004年06月18日

NEVADA(@w荒 第3話 少女狩り

第3話  少女狩り
第1章  釜山襲撃

戦艦オオクボの艦橋。
「あー、どうやらCoolを回収した潜水母艦は
 朝鮮半島に逃げたみたいだねえ」
ブッシュは衛星からの画像を見て言った。
対馬の辺りで地球連邦軍の駆逐艦に対潜魚雷を打ち込まれた
ソーカの潜水母艦オリハルコンは釜山に向かっているようだ。
「これが駆逐艦による攻撃時の映像です」
オペレータが画像をモニターに回す。
「これはかなり被弾しているな。完全な航行は無理ですね」
小泉艦長は言った。
「うん。ではぼくたちも釜山に向かうということだね」
ブッシュはキャプテンシートの小泉の方に振向いて言った。

「しかし・・・」
小泉艦長は顔を曇らせた。
「統一朝鮮はれっきとした連邦の独立国家です。
確かにソーカへの武力制裁に関しては
連邦議会で棄権しましたが・・・」
それを聞いてブッシュはニヤリと笑いながら言った。
「艦長、艦長、艦長。衛星画像を見ただろ?
 統一朝鮮はソーカの潜水母艦に対して
何ら攻撃すらしていない。
しかも、このままいけばあの潜水母艦は釜山に向かうんだ。
僕たちが軍事行動をしても彼らは何も言えないよ。
そして、歯向かったならば彼らも敵ということさ」
「は・・・」
ブッシュは朝鮮半島の画像を見ながら考えた。
ここで戦火を広げて軍需を刺激するには、
もう一花火欲しいところだ・・・
よおし、釜山で一騒動起こしてやろうじゃないか・・・。
国防産業会議理事としてブッシュは軍需産業を振興させるために
戦争の拡大を欲していた。
 このまま行ったら戦火は尻すぼみ。
 折角彼らにCoolとNevadaのことを
こっそり教えて強奪させてやったんだ。
 別にどっちも持っていってもらってよかったんだが。
 カネはもう連邦から支払ってもらっているから、
 懐は痛まない。

 ソーカ擁護国家を一つ戦火に巻き込むのがいいだろう。
 ここ10年間でやっと戦争らしい戦争が起きたのだ。
 せいぜい引っ張って儲けさせてもらう。

ブッシュは唇の端で薄く笑った。
結局第4遊撃艦隊が戦艦オオクボに付くことになり、
戦艦4、駆逐艦6隻で釜山を攻略することになった。
「NEVADA、ジス・バイパー14、ジス・ストレッサー27。
これだけあれば十分だね」
 ブッシュは頷いた。
「で、NEVADAのパイロットの様子は?」
「はい、シミュレータで訓練をしています。結果はかなり良好です。
 サイコフレーム機体であるNEVADAのパイロットとしては逸材ですね」
「おまけに戦闘意欲も高い・・・」
 ブッシュは満足そうに笑った。
「いや、いい戦闘データが取れそうだよ」
「潜水母艦が釜山のドックに入りました」
「よし、機動兵器部隊出撃」
 小泉艦長は命令した。
NEVADAはシューティング・カタパルトに
足のジョイントを接着させた。
「エリカ」
モニターにブッシュの顔が写った。
「なに」
「思う存分やってきたまえ。釜山なんて全部壊しちゃって
構わないから」
「そのつもりよ」
シューティング・カタパルトが作動し、NEVADAは青い空に
溶けていった。

釜山を目前に、
NEVADAを始めとする連邦の機動兵器部隊の前に、
統一朝鮮の機動兵器部隊が現れた。
「数は5ってところか」
エリカはモニターを見た。
シミュレータによって、NEVADAの武器を始めとする
機能の全ては頭に入れた。
まだ生理は続いている。
だが、至極気分はいい。
自分の思い通りになる、圧倒的な力を手にした
エリカはもはや昨日までのエリカではなくなっていた。

分隊長機から命令が下る。
「グエムル5機だ。構わず蹴散らせ」
「りょーかい!!」
NEVADAはいきなり突出した。
「ウリドゥルヌンプサンスピテスムニダ!!」
(我々は釜山守備隊だ!!)
韓国語で相手の機動兵器、通称グエムル(「怪物」の韓国語読み)の警告が入ってきた。
だが。
「うっぜーんだよチョン!チョン語なんて知るかよっ!!」
エリカはバズーカを撃ち、いきなり隊長機を撃墜した。
「ばーか!!」
NEVADAを先頭に各機は釜山に侵攻した。
ブッシュはワシントンに電話を掛けていた。
「ああ、ぼくだよ。どうやら統一朝鮮は連邦軍の軍事行動を阻害した
みたいだねえ。連邦議会の方、うまく根回ししてくれないかなあ?
できれば今日中に統一朝鮮軍事制裁決議を出してもらいたい。
ハチソン議員に中国への根回しはもう頼んであるからさ」

ブッシュはテレビ電話の回線を切ってから
キャプテンシートの小泉を振り返った。
「これでよし・・・と。
 これで沖縄とバイカル湖から大部隊を動かせるよ」
小泉は頷きつつもオペレータに聞いた。
「侵攻部隊の状態はどうか」
「は、現在NEVADAを始め各機が市内に侵攻、
 ドックに向かって進撃しています」
「うん、そうか」
 ブッシュは満足そうに頷き、コーヒーを飲んだ。

「くっ!!」
眼前に砂浜が広がってくる。海水浴場だろうか。
エリカは急降下のGに耐えながら、背後を取った
グエムルを振り切ろうと必死だった。
「あーっ、うぜえ!!!」
エリカの意識が背中のポッドに及ぶと、
ミサイルが一斉に発射され、追撃してきたグエムルは散華した。
NEVADAは地表に着地した。
砂が大量に舞って、海水浴客が「アイゴー!!」などと
喚きながら逃げていく。
エリカは、頭部のバルカン砲でそのうちの何十人かを
虐殺した。
水着を来た朝鮮人たちの
肉が引きちぎれ、血が散乱し、
海水浴場は屠殺場になった
海水浴場を後にする前、エリカは東の方に尊大に立つ
ホテルをビームライフルで射撃した。
ホテルが崩れ落ちていく様を見下しつつ、
エリカは大笑いしてNEVADAを上昇させた。
NEVADAは市街地に入った。
「あーん、何あれ」
エリカは表情に悪魔を宿らせて道路をモニターから見つめた。
「違法駐車でしょ?」
エリカはビームライフルを斉射して道路に一列に並んでいる
駐車車両を尽く破壊した。一昨日母親と買い物に行ったとき、佐世保のデパート前で黄色い輪っか形の駐禁表示が路駐していた車につけられていたことを思い出し、エリカはなぜか
ひどく滑稽に感じた。こっちの方が、ずっと手間が掛からなくていい。
「ははははは!!!」
エリカが哄笑していると分隊長機から連絡が入った。
「少尉!!目的地に急げ!!」
それを聞くとエリカは舌打ちして
「りょーかい」と応答し、ジャンプを始めた。
「あと2回ジャンプすればドックが見える位置に来たよ。
 みんなは?」
「敵の迎撃機動兵器が更に3機増えた。そちらに回せる
増援はせいぜい2機だろう」
「しよーがねーなあ」
エリカは眉をひそめた。
そのときオオクボから連絡が入った。
「少尉、艦隊から釜山中心街へ長距離艦砲射撃を30秒間行う。
 当たるなよ」
「ちょ、ちょっとお!!」
上空に飛べば敵のインターセプターの
いい目標になるかもしれない。
だが、ここで味方の艦砲射撃にやられるよりはいい。
「飛べ!!」
エリカの思考を直接反映したNEVADAはバーニアを最大に
噴かして上昇した。
その下を、オオクボを始めとした艦隊からの射撃が通っていき、
釜山中心市街は砲火に晒された。
次々と破壊され、倒れていくオフィスビル、マンション、橋、道路。
その中にうごめき死んでいく数万の朝鮮人たち。
エリカは、その莫大な量の命の喪失を前に、
歓喜と興奮に打ち震えていた。体の芯が裂けるように熱かった。

「すげえ!!!」
興奮の余り、黒い経血がスーツの股間に滲んだ。

その時。
「もう・・・もうやめて!!!」
敵を感じた
エリカは曲線をイメージして回避運動を行い、
ビームライフルの火線から逃れた。
「アオイ!!」
Coolがドックの潜水母艦から出てきたのだ。
「アオイ!!」
「エリカ?!」
「あんた、階級は何よ!!」
エリカが叫んだ。
NEVADAがバズーカを放つ。
「こんなときに・・・・!!」
Coolは回避し、ビームライフルを撃った。
NEVADAは市街地に紛れ込んだ。
「軍曹よ!!それがどうかしたの?!!」
「あははははは!!あたしの方が上ね!!
あたしは少尉さまよ、この下っ端軍曹!!」
「えっ!」
オフィスビルの残骸の陰から、NEVADAはCoolに向けて3発
ビームライフルを撃つ。

「上を取られた!!」
エリカは歯軋りし、ビルの間から路の間を飛んだ。
爆風で大勢の朝鮮人たちが飛ばされ、
ビルにぶち当たって肉片となった。
太陽の中に、アオイのCoolが見えた。
「やったね!!」
途中から背面で飛んでいたエリカはビームライフルを
連発でCoolに撃ちこんだ。
「し、しまったっ!!」
アオイはNEVADAからの射撃で動きを封じられて一旦エリカの動きを視界から
失った。
「どこ?」
モニターが警報を鳴らしながら表示を出す。
「上っ??」
「もらったああああああああ!!!!
 アオイいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」

だが。
突然がくん、という音がしたかと思うと、
NEVADAの意思解釈システムは再び
レスポンスが極めて遅くなった。
「くっそぉおおおおおお!!!またかよこのポンコツっ!!!」

アオイはNEVADAの様子がおかしいことに
気付いた。
アオイはビームライフルを構えた。
「・・・」
アオイの脳裏に、エリカに殺されたマサコの
遺体と、エリカとの楽しい思い出が半分半分で
浮かんできた。
その躊躇が、彼女の隙を生んだ。
再びモニターに警戒音を伴って赤い物体の接近が
表示され、ビームライフルと思われる熱源が放たれて
いるのを確認した。
「!!」
ジス・バイパーとジス・ストレッサーが1機ずつ
応援に来たのだ。


「くっ!!!」
アオイは敵の射撃を回避し、
市の中心部から脱出しようとした。
「ま、まてええええ!!!」
NEVADAの出力の逓減を肌で感じながら、
エリカの叫びは虚空に消えた。
「一旦帰投しろ」
ジス・バイパーの先任の少尉が言った。
「まだやれる!!まだやれるって!!!
 アオイを殺るんだ!!!」
エリカはものに憑かれたかのように叫び続けた。

2章 自由の女神に生気無し
NEVADAはようやく戦艦オオクボに辿り着いた。
ハッチを開けて黒いパイロットスーツに身をつつんだエリカは怒りながらコックピットを出て来た。
「なんなのこのポンコツ!!」
整備兵に食って掛かる。
「また意思解釈システムに故障があったのですか」
「そうよ!!!」
 その若い整備兵は、エリカが出たコックピットを覗いて、匂いを嗅いでから、すこしもじもじして言った。
「…少尉殿は生理でありますか」
 それを聞いてエリカの怒りと恥ずかしさは頂点に達した。
「それがどうしたのよ!!」
「もしかしたら、
意思解釈システムの齟齬はそれと関係があるのかもしれません」
「えっ…!」
 一瞬ひるんだエリカだったが、再び怒気を顔にあらわして言った。
「とにかくよく見ておいてよね!!私のNEVADA!!」
 そう言って、エリカはリフトで降りて言った。
「あーっ、キモっ! デリカシーない奴ってさいてー」

艦橋でブッシュはデータを見ていきなり笑い始めた。
「はっははははは、何と3日目だったとは!」
艦橋内の女性兵士たちはその声を聞いて心の中から沸き起こってくる嫌悪感を抑えつけることができなかった。
「しかし、Coolも心理操縦システムを採用していますが…」
 技術士官が口篭もった。
「それが何か?相手のパイロットとかいうエリカの友達が生理期間が違っていたら影響も違うだけでしょう」
 ブッシュは訝しげに言った。
「これは実験結果から明らかなのですが、仲のよい友達やルームメイトの場合は生理周期も同期化されるようです。脇から分泌される物質が生理期間を同期化させることがわかっています。事実、今回戦死した最初のパイロット候補の少女たちは、みなルームメイトで生理期間が同じでした。また、サイコフレーム稼動に関しても彼女たちの生理期間における影響はありませんでした」
「ほう」
ブッシュが興味深げにつぶやいた。
「じゃあ、何が問題だということなのかな?」
「おそらく、彼女の余りのキラーエリートとしての優秀性にマシンがついていっていないのではないかと…とにかく彼女が出す数値は異常です。それと…」
技術士官はモニターに画像を出した。
これはNEVADAが海水浴場に降りて海水浴客をいきなり虐殺したときの画像です。
「おや…これはすごい」
更に、NEVADAは釜山中心街で「違法駐車強制排除」と称して大量の車両とその周りにいた人々を殺害しています。作戦遂行のために民間人を殺すことはとにかく、作戦行動外でも殺戮を楽しんでいるのが記録画像からわかります。しかも、これは彼女のほとんど初陣です。こんな兵士は見たことがありません。」
「確かに国際法上は問題があるかもしれないねえ。だが、そんなものはどうにでもなるのは過去に照らせば明らかだし、NEVADAのパイロットとしては極めて適格性があるという証拠にしかならないと思うよ」
 ブッシュは事も無げに言った。
「ただ、彼女の殺人衝動の余りの強さにNEVADAがついていけない可能性があるというのは問題だ。でも、これはNEVADAに改良の余地があるということで、開発・運用データ取得ということからすれば喜ばしい結果が出たとも言えるのではないかな?」
そう、つまりまた予算を引っ張る口実ができたというわけだ。
ブッシュはニヤリと笑った。
小泉艦長がオペレータに作戦の遂行状況を尋ねた。
「敵の守備隊はほぼ全滅させました。潜水母艦を強襲しましたが、Coolは既に逃げたようです。」
「Coolの足取りは?」
「軍事衛星で追わせていますが、わかりません」
「空路ではなく陸路で移動しているということか…」
小泉艦長は舌打ちした。

「貨物トラックにパーツごと分解して輸送されたら、もうわかりませんねえ」
ブッシュは眼前に広がる朝鮮半島の高速道路網を見て言った。
「ソベク山脈に沿ってマスドライブシステムがあるソウルまで運ぶか、それとも島が多い全羅南道に入ってまた別の潜水母艦でソウルの近くまで輸送するか…」
ブッシュは頬に手をやった後、黙って自室に退いた。
PCを起動させ、秘密回線を開く。
「ぼくだ。今どうなっている?」
「連邦議会で統一朝鮮武力制裁決議が出されるところです。今議長が投票結果を手にしました。」
ウィンドウが開いて、ニューヨークの地球連邦議事堂での議決の様子を報道するニュース番組がライブ中継されている。
「…ではかねての手はず通り」
「わかりました」
相手との通信ウィンドウは閉じ、ニュースのウィンドウだけが画面に残った。
「武力制裁決議が可決されました…統一朝鮮、チェチェン、イラン、イラク、アラビアイスラム連邦等が憤然として席を立ちます」
アナウンサーが緊迫した声で伝える。
「ありゃ。フランスまで制裁に反対したのか…」
ブッシュは皮肉そうに顔を歪めた。
「ご先祖以来、あんたたちとは相性が悪いねえ…」
そうブッシュが言ったとき、突然爆発と閃光が画面を覆った。
ブッシュはそれをみて薄く笑う。

エリカが艦橋に上がってくる。
「状況はどうなっているんだ!!」
小泉艦長が叫ぶ。
「わかりません、ニューヨークの地球連邦議事堂ビルに小型核爆弾テロがあった模様です。」
オペレータが叫ぶ。
ブッシュが上がってきた。
「艦長、こういうときはニュースを見た方が早いよ。インターネットからCNNを出してくれ」
CNNの画像がモニターに表示された。
「現在、小型核爆弾テロがあったのは、地球連邦議事堂、ニューヨーク証券取引所、マジソン・スクエアガーデン、エンパイヤステートビル、それと…」
キャスターの顔が歪んだ。
「たまたまクルーがショッキングな画像を撮影しました。ご覧ください…」
ニューヨーク港の入り口にあたるリバティ(自由)島に立つ自由の女神は、ニューヨークのみならずアメリカの象徴として存在してきた。ヨーロッパからの移民たちは、アメリカに来る際に、自由の国の象徴として最初にそれを仰ぎ見たものだ。
だが。
青白い閃光と爆発の後、キノコ雲が立った。
自由の女神は、台座もろとも粉々になり、もはやそこには存在していなかった。
ブッシュは微かに笑った。
そう、ぼくはあんたも気に入らなかったのさ。自由なんて結局幻想なのに。自由というのはぼくたち支配階級が愚民どもを支配管理するために嗅がせる麻薬のようなものだ。そんな幻想の象徴にすぎない癖に偉そうにそそり立ち、時にはぼくたちを見下ろすあんたがね。
先祖代々ブッシュ家が通うことになっているエール大学に通っていたときの夏休み、ブッシュはニューヨークに恋人と遊びに行ったことがあった。恋人が別れを切り出したのは、リバティ島の自由の女神のすぐ下だった。
あの思い出と一緒に自由の女神もおさらばさ。
エリカはブッシュの暗い笑いを見逃さなかった。
「この人、あたしの同類だ」
心のどこかで稲妻のように言葉が閃いた。
世界への憎しみと破壊本能を材料に自分を構成している者としての同じ匂い。

しかし、その言葉と共に生じた感情は果てしのない嫌悪だった。
自分の持っている醜さを他人に見せられたという同族嫌悪である。
「艦長」
「は」
「小型核爆弾は、街を破壊できる力はない。だが、ニューヨークが核攻撃されたことは厳然とした事実だよ。これで、こっちも統一朝鮮相手に核を使えるね。」
「しかし、まだ統一朝鮮やソーカがやったと決まったわけでは」
オペレータがそう言うと、ブッシュは声を荒げた。
「何を言ってるんだ!!!軍事制裁決議が可決され、統一朝鮮の議員が去った時に核爆発が起きたんだぞ!! あいつらがやった意趣返し以外に何が考えられるというんだ!!」
エリカは、何の客観的根拠もあったわけでもなかったが、この男がこの事件の犯人なのだと直感した。この必死さ。何かを隠そうとしている必死さ。本当の犯人が他人に罪をなすりつけようとするときの独特の口調、雰囲気、表情。
「うざったてー」
エリカは小声でつぶやいた。

第3章 原子の聖火
「3番管巡航ミサイルに戦術核弾頭装填。目標、釜山市中心街」
「照準釜山市中央市街、市役所に固定。装填完了。発射よろし」
オペレータが報告する。
 小泉艦長は命令を伝えた。
「てええーーーーっ!!」
戦術核ミサイルはオオクボ後部のポッドから発射された。ミサイルは高速で目標に向かって飛行し、やがて着弾と同時に閃光が夕暮れの空を焦がした。時計が逆戻りして真昼のように明るくなったかと思うと、海を挟んで眼前の釜山にキノコ雲が立ち上った。
「市街中心部に着弾しました。推計即死者数40万人」
エリカは、その原子の花火を瞠目して見つめていた。
「きれい…」
あそこで、40万人の朝鮮人どもの命が散ったんだ。
「すごい…」
 
エリカの中で、歓喜と悲しみと恐怖と残忍さと高揚感が互いを喰らい合い、表現し難い感情の合成物が生まれた。エリカは自分の心の中の光る闇の中に朝鮮人たちがわけのわからない言葉で喚きながら苦しむ姿を数多く想像し、興奮状態にあった。
すげえ。戦争すげえぇ!!
エリカは、ブッシュを見た。
ブッシュの表情には、彼女と同様の光る闇があった。
心地よい悪のパワーに身を震わせる彼の姿に、エリカは前に日曜礼拝の教会の説教で聞いた聖書の話を思い出した。黙示録にいう悪魔の数字666が
自分と彼の額には刻印されているような気がした。
ふん。
こんな素晴らしい眺めを見せてくれる限りは、あんたについていくよ。
でも…。
あんたの狡猾があたしの残忍を裏切るようなことが万が一あったときは…
あんたがあたしの光る闇の中でのたうちまわるだけのことさ。
エリカは一瞬暗い光を瞳に瞬かせてから、再び前方の釜山の滅亡シーンを見つめた。
posted by 東京kitty at 20:58| 東京 🌁| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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