2010年01月29日

解語之花 - ひゃくごじゅうよんせんち(@w荒

と或る(とある)日の昼、冱てる(いてる)冬の空の下。

ヲレは新宿歌舞伎町の幕度鳴度(マクドナルド)で珈琲(コーヒー)を喫していた(@w荒
隣では試験勉強か、少しヴスカワの女子大学生が複素解析の問題を解いていた。

Integral (∞,0)(sinx/x)^2 dx

簡単な問題だ。半円で原点の周りを迂回した積分路を設定してCauchyの積分定理を使い、Jordanの補助定理等を用い、答えは直ぐに出る。π/2だろ(@wぷ

ヲレは暗算で答を導いた。

だがこの女は計算違いをしている。
バーカ、こんな簡単な計算間違えるなよ(@wぷ

「答え、間違ってるよ(@wぷ」と謂おうとした瞬間、「24」のCTUの電話着信音が鳴った。
ヲレの携帯だ(@wぷ

「はい(@w荒

ヲレが電話を秉る(とる)と、回線の向こうから若い女の声が聞こえてきた。
「私、自殺するから」

「は?(@w荒

電話は突然切られた。


ヲレは通話記録の番号を確認した。
知らない女だし、知らない番号だ。
初めて掛かってきた。

ヲレは不思議に思い、まあ世の中には変わった者もいるな程度に思った(@w荒

すると、また電話が鳴った。
同じ番号だ。
ヲレは携帯を秉った(とった)。

「さっきの人?(@w荒
沈黙。

切れた。

キモいな(@wぷ
ただの害基地かよ(@wぷ

ヲレは早速その番号を受信拒否に設定しようとした。

するとまた電話が鳴った。


鳴り続ける携帯を前に、
"amem.i nen amem.i erpw, khen is pw(@wぷ"
(アメミ ネン アメミ エルプー、 ケン イス プー)
「秉るべきか秉らざるべきか、それが問題だ」と、
シェークスピアのハムレットの台詞を真似てヲレは古代エジプト語で呟いた(@w荒


「秉っちゃえ(とっちゃえ)(@wぷ

ヲレはあっさりと電話を秉った。
「あの・・・」
可愛い声だ。ヲレはその時気付いた。

「ひょっとして、番号間違えた?(@wぷ

ヲレは直截的に聞いた。

ヲレは微かに揺れる電話の向こう側の空気を確かに聞いた。
「あ・・・はい」

その時ヲレは彼女の声の背景音も同時に聞いた。
雑踏。いや、それだけではない。他にも何か聞こえるぞ(@w荒


パーン。ガタンガタン、ガタンガタン・・・・
電車がプラットフォームに入ってくる音だ。
バッシャーン。
ドアが開く。
そして聞こえてくるのは・・・

パラパーパラッパラー パラパーパラッパラー パラパラパラパーパーラー♪
「間違えちゃいました」
彼女の声に被さって聞こえてきたのは、
エビスビールのCMの音楽だ。
元来は映画「第三の男」 の音楽でアントン・カラスによるものだ。脚本は有名な英国作家のグレアム・グリーン。但し、彼の書いたハッピーエンドの結末は監督のリードが差し替えてあの味のある幕切れになっている(@w荒

話が逸れた。
つまり彼女が今いるのは恵比寿駅という事になる(@w荒


恵比寿はエビスビールとの関連で、
駅の発車音にそのCMの音楽を使っている。
ヲレは彼女が電車に飛び込んで死ぬ心算(つもり)かと計算した(@w荒

「ははは、まあそういう事もあるさ(@wぷ

適当に話を合わせつつ、
思考を続ける。
とりあえず、彼女の場所が分かった。
ヲレは幕度鳴度を出た。

何時の間にか、駆け足になっていた。


「で、何歳?」
「え?」
「君の歳(@wぷ

横断歩道を渡り、坂を上がれば新宿駅のビルが見えてくる(@w荒

「じゅうご」

ヲレは速度を上げた(@wぷ


「運動してる?」
「え?ああ(@wぷ

ヲレの吐息を聞いて、彼女が問うてきたので
不図(ふと)答えた。


「ところで、本当は誰に電話しようとしてたの?(@w荒

ヲレはルミネ1階の交番を一瞥した。
ここで警察に行ってこの子の事を任せてもいいが、
電話を離したらすぐ電車に飛び込むかもしれないし、
警察に事情を説明する時には紙に書けばよいとして、
余りにも遽しく(あわただしく)、
また彼女を確保できるかも分からない。

此処はヲレが直に行った方がいいだろう(@w荒


「本当は・・・」

彼女は言葉を濁した(@w荒

「本当は・・・・」

電話の向こうで空気が震えた(@w荒

ヤバい。

どうやら、地雷質問だった様だ。
死ぬ前に掛ける電話の相手なのだから、
相当の相手で
場合によっては彼女の自殺の意志を固めた張本人かも知れない。


いやまてよ、
でも其う謂う相手なら、番号を登録してあり、
間違える事なんてあるかな(@w荒
適当に電話してみたら
偶々(たまたま)ヲレの番号だったのかもしれない(@w荒

揣摩臆測(しまおくそく)の中で
逡巡(しゅんじゅん)してる閑(ひま)も無い(@w荒

ヲレは地下入り口から階段を降りながら、
彼女にその事を問いかけてみようとした。


すると電話が切れた(@w荒


改札前まで来てSUICAを出した。
すると、

「ただいま恵比寿駅で人身事故があり、
 電車が止まっています」

との構内放送があった。

ヲレは彼女が投身したのだと思った。
一瞬の間に消えた命にヲレは茫茫とした思いに囚われた。

だが。


電話が、鳴った(@w荒


電話の向こうの声は、泣きじゃくっていた。
そして背景音の洶洶(きょうきょう)としたざわめきとどよめきが、
何が起きたかを示していた(@w荒


「君は、生きているんだね(@w荒

ヲレはぼそっと言った。

「はい・・・はい!!」

電話の向こうの声は、悲鳴だった。

「今どんな服を着ている?」

ヲレはそう言いながら、動いている別の路線の電車に乗った。

「学校の・・・制服を着ています。」
彼女はゆっくりと答えた。


「身長はどのくらい?」
「ひゃく・・ひゃくごじゅうよんせんちです・・・」

そう言いながらも彼女は泣きじゃくっていた。

電車が恵比寿駅に滑り込み、
ヲレは駅員達が少し前まで人であった骸を
白い布で覆って合掌しているのを窓から垣間見た(@w荒

ヲレは鷹の様な目でその傍のホームの上に佇んでいる
有名私立女子校のセーラー服姿の少女を見つけた。
周囲の構築物等の比較対照から見て、
その身長は
「ひゃくごじゅうよんせんち」
以外の何ものでも無かった(@wぷ


「君が目の当たりにしている事は、
とても衝撃的だったとをもう(@w荒

「えっ」

「だって泣いてるんだもの(@w荒

「・・・・」

少女の後姿が近づいてきた。


「こう考えたらどうだろう。
 その人は、君の代わりになってくれたんだって(@w荒

「えっ!!」

「そしてヲレは今君の隣にいる(@w荒


雑踏の中、ヲレは左手で電話機を持ち、
見出した少女の細い肩に右手を置いた(@w荒


振り向いた彼女の解れ髪と
今まで泣き腫らし、そして今度は驚きを宿した瞳を
確り(しっかり)とした視線で捕らえつつ、
彼女の嬋娟嫋娜(せんけんじょうだ)振りに驚いた。

ムンクの「純潔」に描かれた少女の如く、
彼女の心は一糸も纏っていなかった。


「可憐だ(@wぷ

ヲレは心の中で一瞬呟いてから、
言葉の弾丸を彼女の心に撃ち込んだ(@w荒

「生きることの意味を考えたりするな。
 言葉は生のためにある。
 言葉のために生があるんぢゃあない(@w荒

彼女の顔が一瞬引きつった。


「い

    ま


            だ(@wぷ


ヲレは好機を逃すほどノロマではない。


「こわかったろ?(@w荒
ヲレは彼女に微笑みかけた。

ヲレは彼女の心に千分の一秒単位で生じた間欠を認識し、
その中に侵入した(@w荒

すると彼女の恐怖と不安で
固く糾われた(あざなわれた)心が
解け(ほどけ)、
泣きながらヲレに抱きついてきた(@w荒

体を伝って感じる、
鼓動する彼女の心臓の音が彼女の命の重さだった。

ヲレは彼女の髪を優しく撫でた(@w荒


「生きることは、
 君がをもっている以上に佚しい(うつくしい)よ(@w荒

ヲレは静かに呟いた。




-----------------------------完-----------------------------

posted by 東京kitty at 04:49| 東京 ☀ | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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